地殻変動の解析には、電子基準点のデータを利用しています。
電子基準点は、高密度かつ高精度な測量網の構築と広域の地殻変動の監視を目的として、国土地理院が設置したGNSS連続観測点です。設置数は全国約1,300箇所です。
東日本大震災時には、通常東北地方はユーラシア大陸側(西側)向きの地殻変動が、発生2ヵ月前より徐々に太平洋側に動き始め、発生3日前に東向きの変動があり、徐々に変動が顕著になって発生当日には5メートルもの大きな変動がありました。
しかし、3月9日に震度5弱の地震があったため、この大きな地殻変動は11日の本震の前兆であったかは分かっていません。
東日本大震災では9日以降(本震発生3日前)に大きな変動がありましたが、その他の地震では大きな変動が現れるまでに数日かかり、変動が観測された地域の面積も小さいことから、2011年3月9日以降の地殻変動は異常であったと言うことができます。
2014年7月12日 M6.8 最大震度4 福島県沖
3日前から変動が現れ、当日にかけて大きく変化しました。
地殻変動解析では、水平変動に加えて高さ変動も見ています。
下図左の地図がレポート配信時の沖縄周辺の状況で、奄美大島〜与那国島の広い範囲で小〜中規模な地殻変動が観測されていました。このことから、種子島~宮古島でM6クラスの地震発生の予測を立て、臨時レポートを配信しました。
その結果、4日後に奄美大島付近でM6.3、最大震度4の地震が発生しました。
2019年に山形県沖で発生した震度6強の地震では、新潟県で南東方向へ向かう地殻変動が複数地点で観測されていましたが、過去データに類似する地殻変動の事例はなく、レポートでは周辺地域での規模不明な大地震発生の警戒を呼びかけました。
その結果、配信翌日の6月18日に山形県沖地震 M6.7・最大震度6強の地震が発生しました。
ここでは、数日前から周辺に変動がありましたが、電子基準点のデータは1997年以降のものしかないため、過去事例がなく、規模やエリアを予測できませんでした。 課題として、地殻変動と地震間にある普遍的なルールを見つける必要があります。
過去の類似データと過去の地震データの相関性を検証
一番簡単な的中率は2種類
予測したい地震に対して予知できた地震の割合として予知率
観測した異常のうち、実際にその後地震が発生した割合、来ると言って来た割合として適中率
高い方が良いが、高いからといって価値が高いとは言えない
予知率の場合、異常の地殻変動の閾値を下げることで、毎日異常という判断にした場合、全ての地震前に異常な変動が観測されているので100%となる。適中率も同様
地殻変動が起きた後に沖縄で地震が発生する確率
地殻変動関係なしに沖縄周辺で地震が発生する確率
通常に比べてどの程度地震が発生しやすい状況にあるといえるか
関係ない場合1付近、関係あれば高い数字に
右図のピンは電子基準点、〇はM6以上の地震、赤い丸が地殻変動後1週間以内に発生した地震、青丸が地殻変動なしに発生した地震
九州などは青丸だけで、赤は電子基準点付近に集まっている
下の表が地殻変動とその後の地震の対応表
地殻変動後に種子島~宮古島附近で地震が起きやすいのかを検証
確率利得4.8で高まっていると判断